「あなたの人生、片づけます」やさしくてきびしい短編ストーリー集

この本は、本屋さんの片付けのコーナーで、ふとタイトルが目に留まりました。

「あなたの人生、片づけます」

オシャレな装丁。背景の写真はキッチンでしょうか。一見すると整っているようですが、よく見ると物が多すぎます。

よくある片付け本かと思いつつも、「人生」というキーワードが気になり、手に取ることにしました。「部屋を片づける」のはわかりますが、「人生を片づける」となると、なかなか聞かない言葉ですよね。

「あなたの人生、片づけます」のあらすじ

社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子供に見捨てられた資産家老女、一部屋だけ片づいた部屋がある主婦…。『部屋を片づけられない人間は、心に問題がある』と考えている片づけ屋・大庭十萬里は、原因を探りながら汚部屋を綺麗な部屋に甦らせる。この本を読んだら、きっとあなたも断捨離したくなる!

(Amazon商品紹介ページより引用)

この本は小説です。4つのストーリーからなる短編集となっています。

「片づけブログ」を運営していたことから、やがて「片付け屋」になった十萬里さんという女性が、さまざまな事情を抱えたひとたちの人生を片づけていきます。部屋というよりは、「心」の片付けです。

部屋はその人の心を表す。そんな言葉、聞いたことないですか?

忙しかったり、心が荒んでいたり、健康でなかったりすると、部屋は汚くなります。逆に、時間や心に余裕があったり、健康だったりすると、部屋は自然ときれいになりますよね。

この本に出てくる「片付け屋」十萬里さんも、『部屋を片づけられない人間は、心に問題がある』という考えを持っています。そして、汚部屋を作る原因である、心の問題に迫っていく。そんなお話です。

「あなたの人生、片づけます」の感想

汚部屋暮らしのOL

私が特に親近感が持てたのが、一話目に出てくるOLさんでした。年齢が近いというのが、その理由です。

彼女は高収入な会社に勤めており、いいマンションに住んでいます。しかし、部屋の中はモノであふれかえり、足の踏み場もない。友人や彼氏どころか、両親さえ招くことの恥ずかしい。そんな部屋に両親が訪ねてきたところから、事態が動きます。娘を心配した両親は、「片付け屋」に片づけを依頼します。

「健康にいい食事をしよう」「料理を作ろう」「~~しよう」と思いつつも、ずるずると引きずられて何もしない、楽な方に流れる様子が描かれています。それなのにふとしたときに他人を見て、自分を恥ずかしいと思う描写なんかが、リアルに感じられました。

最初は彼氏がいるような描き方でしたが、話が進むにつれてその関係性に引きました。どう考えても騙されているのに、自覚しようとできない心理が滑稽で痛々しかった。気持ちや情が入るから、自分を客観的に見るってことはなかなかできません。

そんな彼女が、片づけ屋さんから片づけの指導を受けることで、少しずつーーやがて劇的に変わっていきます。

片づけ屋さんは、お世辞など、耳障りのいいことは言いません。接客商売としては失格なくらい正直です。そして、素直な言葉は時として厳しく、心に痛いです。でも、汚部屋とリンクするほど心の中がぐちゃぐちゃなひとには、痛みは治していくために必要なものなのだと思えました。

妻を亡くしたおじいさん

妻が生きていたときは、なんでも妻任せ。そのため、いざ妻がいなくなると、家事はほぼ何もできないおじいさんの話です。

仕事に打ち込む職人。買い物に行くなんて男のすることではなくて、恥ずかしい。そんな頭で生きてきた結果、幼稚園児よりも家事のできないウン十何歳児が出来上がる。これも、結構、「あるある」話なのではないでしょうか。

そんなおじいさんですが、心配する娘さんによって依頼された片付け屋さんによって、少しずつ変わっていきます。

このおじいさんですが、最初から最後まで、片付け屋さんのことをうさんくさく思っています。他の話のメイン人物(汚部屋の主)も、大なり小なり、同じような気持ちを持っています。ここらへんが、この本を嘘くさいと片付けずに読み切れた理由のひとつです。

だって、「片付け屋」なんてうさんくさいです。怪しんで当然です。最近は、各種の片づけ本がヒットしていますし、そうでもなくなってきているのでしょうか。もしこの小説のような「片付け屋」さんが実在するのなら、ぜひ頼んでみたいですね。ただ、一応ミニマリストの端くれなので、どうして依頼したのかと呆れられてしまうでしょうか。

なんでもある家に住む奥様

めちゃくちゃリアルでした。このメンタリティ! 自分ではなく、周りの年配の方々に。

「高かったから」と処分はできない。しぶしぶ売りに出すことにするが、売れない、もしくは二束三文で買いたたかれる。さらには、処分費用を要求される。

いざとなったら売ろうという考えでため込んでいたものが、ろくな値段のつかないガラクタだと知ってショックを受ける様子には、「あるあるー」と共感を覚えずにはいられませんでした。

物が余っている現代。買ったときに高かったものでも、売るときは中古です。値段が安いならまだまし。処分費用を払う必要さえ出てくるのです。

「娘や息子に残す」となんでもかんでも残すのは考えものです。

ぶっちゃけ、残すのはお金だけでいいです。自分が年配になったとき、そういう考えを持っていたいですね。

全体を通した感想

本人から自発的に変えることは難しい

本書を読んで、4つの編すべてで、「本人以外のひとが片付け屋を依頼している」ということに気づきました。

部屋が片付いていない=心の中が片付いていない

そんなぐちゃぐちゃな状況に陥っている本人が、自発的にどうにかすることは不可能です。「どうにかしなきゃいけない」という自覚がありません。もしくは「どうにかしなきゃ」と思っても、できずに(せずに)日々を送っています。だからそんな状況を心配した、周りのひとが片付け屋を依頼します。

自分から「片付け屋」に依頼するというアクションを起こせる時点で、そのひとはどうにでもしていくことができます。

毎日を丁寧に過ごすことが、生きること

家事はめんどくさいです。やりたくないです。やらなければやらないで、積もり積もって、罪悪感を刺激します。

でも、毎日まめにこなすことで、楽しくなります。自分を褒めてあげることができます。少しずつやる気が出てきて、前向きな気持ちになります。

部屋を片づけることは、心を片づけること。そしてそれは、人生自体を「すっきり」とした気持ちで送ることにつながっていきます。

まとめ

よくある片付け本かと思って手に取ってみたら、意外といい話でした。小説としても十分読み応えがあります。

数年前に読んでいたとしたら、「私の人生も片づけてほしい!」と思ったに違いありません。

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