「君の名は。」を読んでみたら「きみにしか聞こえない」を思い出した

読んだものの感想

新海誠の「君の名は。」の小説版を読みました。そして映画も観ました。

昔に読んだ乙一の小説「きみにしか聞こえない」を思い出したので、両者の共通点を洗い出しつつ、それぞれの感想をつづります。性質上、両方のネタバレを含んでいますので、未読/未鑑賞の方は、ご注意ください。

新海誠の「君の名は。」とは

山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は、自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。一方、東京で暮らす男子高校生・瀧も、山奥の町で自分が女子高校生になる夢を見る。やがて二人は夢の中で入れ替わっていることに気づくが―。出会うことのない二人の出逢いから、運命の歯車が動き出す。

(Amazon.com 内容紹介より)

新海誠さんの作品は、「秒速5センチメートル」しか観たことがありませんでした。「秒速5センチ」は予備知識なしで観て、背景美術の恐ろしいまでの綺麗さとリアルさに感動しました。アニメなのに実写レベルでリアル。そして綺麗。

「男の恋愛は上書き保存、女の恋愛は名前を付けて保存」という名言を思い出すようなストーリーでした。甘酸っぱくも切ない初恋。実らないどころか、吹っ切れるような出来事もなく、ただ二人の距離が秒速5センチメートルずつ離れていっただけ……という……。

アニメでここまで憂鬱というか切ないというか複雑な気持ちになったのは、初めてでした。ただ、現実でも、初恋ってそういうものなのかもしれませんね。激動って意味での物語なんてなく、日常のなかで静かに思い出になっていくもの。

話は戻りますが、「君の名は。」。前の作品の「秒速5センチ」が心に刺さっていたから、予告編を観た時点で、期待度は高かったです。宣伝に気合いが入っている! 映像はやっぱり綺麗。

主人公は、神木 隆之介 君 と 上白石 萌音 さん。神木 隆之介君は、「探偵学園Q」や「SPEC」、最近は「るろ剣」の映画にも出演している演技力に定評のある俳優さんです。上白石萌音さんは「ちはやふる」の映画のかなちゃんですね。ちょうど「ちはやふる」の映画の前に予告編が流れたので「かなちゃんだ……!」ってなりました。

予告編を聞く限りでは、台詞の演技も自然でよさそうな感じ。見に行きたいなーと思っているところ、本屋で小説版を見かけたので、思わず読みました。映画の上映がスタートする前だというのにも関わらずです。

ストーリーについては、乙一の「きみにしか聞こえない」を思い出しました。そこで、両者の共通点と、違うところについてご紹介しようと思います。

乙一の「きみにしか聞こえない―CALLING YOU」とは

私にはケイタイがない。友達が、いないから。でも本当は憧れてる。いつも友達とつながっている、幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れだした。それは世界のどこかで、私と同じさみしさを抱える少年からのSOSだった…。

(Amazon.com 内容紹介より)

乙一といえば、「夏と花火と私の死体」で十七歳の若さでデビューしたことで有名な小説家です。映画化作品は複数あり、この「きみにしか聞こえない」も映画化しています。

どこらへんが共通しているのか?

少年と少女が、ある日不思議な力によって繋がりをもつ

どちらも、離れたところに住んでいる高校生の男女が、ある日突然、不思議な力の働きで繋がりを持ちます。

「君の名は。」では、身体が入れ替わるという現象を通じて。

「きみにしか聞こえない―CALLING YOU」では、頭のなかの携帯電話がつながるという現象を通じて。

そして、二人はだんだんと惹かれあっていきます。

ただ、ちょっと疑問なのが、「君の名は。」の方。ふたり仲良く喧嘩しているイメージはあったのですが、どこで惹かれ合ったのか? というのが分からなかったです。

瀧→三葉はわからないでもないです。奥平先輩との接し方で、間接的に……? と考えると納得がいくような気はします。

三葉→瀧は、どうなんでしょうか。三葉が涙を流すシーンより前に、何か描写があったらなー、と思います。

余談ですが、小説では瀧が先輩にフラれたように感じ、映画では先輩が瀧にフラれたように感じました。


ふたりの間に横たわる、時間という距離

「君の名は。」も、「きみにしか聞こえない―CALLING YOU」も、ふたりの間には実は時間軸の差があります。これが、終盤の山場を盛り上げる大きな要素となります。

時間軸の違い。超えられない距離。こういう要素は大好きです。

大切なひとを助けようとする姿

「君の名は。」も、「きみにしか聞こえない―CALLING YOU」でも、想い合うふたりが、相手を助けようと奮闘します。運命と戦う姿が恰好いいです。そしてその強い姿勢は、相手との関係の中で育まれ、成長したもの。熱いですね。

違っているところ

「君の名は。」の長所

映像の力

まずは映像が美麗。そしてリアル。背景や小道具が、いちいち実写レベルのリアリティを持っているんです。これが、突飛でファンタジーな物語に、リアル感を与えようと頑張っている感があります。

万人受けしそう

雰囲気がリア充です。主人公どちらにも友達がちゃんといます。これがまた、いい子たちです。糸守の方。

コメディ調

妹とのやりとりなど、結構、笑いどころも押さえています。「秒速5センチメートル」と比較すると、万人受け度は歴然としています。個人的には、「秒速5センチメートル」の方が刺さるものがあった気がしますが……。

中盤のどんでん返しの絶望感

中盤で、ヒロインが実は三年前に死んでいたということが明らかになります。美麗な映像で描かれる、隕石が落ちて湖ができた景色。絵にリアリティがある分、絶望感が増します。ここらへんは特に、小説を読まず、先の展開を知らずに映画から観た方が、より楽しめたような気がします。

小説を読んで頭のなかで創造していた映像より、映画の映像の方が圧倒的にすごい! となると思います。

ミュージカルチック

予想外に音楽が自己主張していました。ミュージカルみたい。歌詞ありの音楽が劇中で何度も流れます。

これはどうなんだろう。私の場合、映像が速く切り替わるのに加えて日本語の歌詞付きの音楽が流れたら、完全に情報過多に陥ります。歌詞まで聞き取る余裕がないです。


音楽を聴いて耳になじませて、金曜ロードショーを楽しみに待ちたい感じですね。

予告の歌「前前前世」を初めとして、耳に残るいい感じのJ-popでした。こういうのが中高生にはうけるんだろうなあと感じます。私が中高生だったら、何度も見に行きたくなるレベルでした。カラオケでも人気出そうですね。また練習しておきます。

「きみにしか聞こえない」の長所

切ない。ぼっち感がリアル

ぼっち感と、そこから来る切なさがマックスです。「君の名は。」の、友達いっぱいいる開けたリア充感とは、ちょっと違います。とにかく寂しさと、相手との声のやりとりで、少しずつ前向きになっていく、ひとりではないということで心が暖かくなっていく様子が、丁寧に描写されています。

「主人公の心の成長」が描かれている

「君の名は。」では、あんまり感じられなかったところ。主人公の心の成長が、とある手段ではっきりと描かれています。

タイトルにこめられた意味

そういうことか……と切なくなります。


漫画も読みました。表紙では確認できませんが、画力が高くてほぼ完ぺきなノベライズです。どんでん返しというか、ある人物の正体なんかは、漫画の方が理解しやすいです。ラストの読後感も爽やか。爽やかプラス切なさ。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

片方しか知らないという方は、ぜひこの機会にもう片方も読んで/観てみてください。甘ったるいだけじゃない、時間軸がすれ違う青春もの。おすすめです。

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